日本のリーダー層はAIの特性や恐ろしさを全く理解して居ない。
私たちはいま、「AIを理解しているつもりで、実は何も分かっていない」という、少し怖い場所に立っています。
AIの基本の「キ」は、とてもシンプルです。ある臨界点(エマージェント・アビリティ)を超えると、能力は直線ではなく指数関数の最後に到達する真上に直線的(爆発的)に跳ね上がる。この性質は、NatureやScience、NeurIPSなどQ1論文でも繰り返し確認されています。つまりAIは、「少しずつ賢くなる道具」ではなく、ある日突然、別物になる存在です。
日本のリーダー層はこのAIの特性や恐ろしさを全く理解して居ない。
だからこそ、先行者利得は異常なほど大きい。勝者総取り。アメリカや中国の企業が、年間利益の何倍もの資金をAIに突っ込む理由は、決して夢物語ではありません。負けた瞬間、産業ごと消えると分かっているからです。
イーロン・マスクが「AIモビリティで自動車の時代を終わらせる」と語るのも、挑発ではありません。
2026年末にエマージェンスを超え、2027〜28年にAGI、2030年代にASI――。この時間軸を前提にすれば、自動車産業が5〜10年で主役を降りるという推定は、むしろ保守的です。
一方、日本はどうでしょう。「AIやソフトウェアに備えている」と答えた企業は2割。残り8割は、未来に向かってアクセルを踏んでいる“ふり”をしながら、サイドブレーキを引いたままです。
ラガード16%、動かない64%。これはもう組織論ではなく、国民的様式美です。
中国と米国の先進AI企業群は、年間約150兆円をAIに投資し、4年間で600兆円を投じると予測されています。1社で年数兆円は珍しくありません。それに対し、日本最先端の自動運転AI企業が153億円の資金調達で喝采を浴びる。桁が二つ違うのに、「よくやった」と拍手が起きる。この数字に鈍感な愚かさこそ、日本の病理です。
先ごろ決まった政府の補正予算18.3兆円のうち、AI・半導体は1.37%。しかも多くが先行き不透明な案件に消える。世界では、メタが1兆円で100人のAI人材を獲ると言う。一人100億円。
日本は同じ1兆円で、高度なAI人材など日本には殆ど居ないし、大規模なAIトレーニングセンターや、ビッグデーターも無いのに「AIで勝つ!と云う国家戦略」を語る。これは同じ政府投資でも数年前からAI投資を始めている高度AI人材が山ほど居るアメリカ政府の年間投資額の1/33、中国政府の1/13にしか成りません。もう”遅いし!少ないし!人財無し!”しかもその差圧倒的で勝敗は試合開始前に決まっています。
83年前の日米開戦時の実力差と同じ様ですね!
それでも政府は「信頼性の高いAI」「日本の勝ち筋」と言います。フィジカルAI、素材、新薬、製造業――どれも正論です。ですが、高度AI人財も無く、大規模計算資源やデーターも、数兆円規模のトレーニングセンターも無い国が、AIの進化だけを都合よく取り込めるという発想自体が、確証バイアスの塊です。
Q1論文が示す現実は冷酷です。AIは使われた分だけ賢くなり、データが集まった場所に知能が集中する。
利用率9割超の国と、5割で足踏みする国。その差は、努力ではなく時間です。
それでも日本社会は、「まあ何とかなる」「悪くない」「前例がない」と言い続けます。問題を直視せず、先送りし、悪に慣れ、悪を許容する。この姿勢が、AI時代では最も危険なのです。
AIは忖度しません。空気も読みません。だからこそ、空気で動く社会は、最初に置き去りにされます。
優しさだけでは、生き残れない時代が、もう始まっています。