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サプリではなく自然の色――赤、黄、緑、橙の豊かな野菜や果物が、最も確かな「延命薬」なのだ。

2025年10月発表の British Journal of Nutrition(DOI: 10.1017/S000711452510531X) に掲載された論文
「Associations between serum biomarkers of fruit and vegetable intake and all-cause, cancer and CVD mortality among US adults」 をもとに、
血中カロテノイド濃度と死亡率の関係に焦点をあてて、内容をわかりやすく約1600字でまとめたものです。

血中カロテノイドが示す「生きる力」

──野菜と果物の“色”が命を守る科学的根拠

2025年10月、英・栄養学誌 British Journal of Nutrition に掲載された米国成人を対象とする大規模研究は、野菜や果物に含まれるカロテノイドの血中濃度が高い人ほど、死亡リスクが有意に低いことを明確に示した。研究は、米国の国民健康・栄養調査(NHANES)参加者1万2000人超を平均13年間追跡し、がん・心血管疾患(CVD)・全死因死亡率を分析したものである。

まず注目すべきは、総カロテノイド濃度(αカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチン、リコペン、ルテイン+ゼアキサンチンの合計)とがん死亡率の強い逆相関である。血中濃度が最も低い群(第1三分位)を基準とすると、最も高い群(第3三分位)ではがん死亡リスクが0.53倍(47%低下)。これは統計的にも極めて有意であり、生活習慣やBMI、喫煙などを調整しても結果は揺るがなかった。つまり「血中カロテノイドが高い=がんで亡くなりにくい」という関係が、独立して存在した。

また、心血管疾患死亡率も同様の傾向を示した。総カロテノイド高値群ではCVD死亡が約38%低下(HR=0.62)。とくにリコペンやルテイン+ゼアキサンチンの高濃度は動脈硬化関連死との逆相関が顕著であった。酸化LDLの生成を抑える抗酸化作用や、血管内皮の炎症を抑える機能がその背景にあると考えられている。

さらに、全死因死亡率(すべての原因による死亡)でも明確な差があった。最もカロテノイド濃度が高い人々では全死因死亡が約35%低下(HR=0.65)。この関連は男女ともに確認され、特に果物や緑黄色野菜の摂取量が多い人ほど、血中濃度が高く、死亡リスクが低かった。

研究者らは、血中カロテノイドが単なる栄養素ではなく、**「野菜・果物摂取の生体マーカー」**としても機能している点を強調する。食事調査の自己申告は誤差が大きいが、血液中のカロテノイド濃度は実際の摂取量や吸収効率を反映するため、生活習慣病リスクを客観的に評価できる。つまり、カロテノイド値の高い人は単に「野菜好き」ではなく、「炎症の少ない体内環境を維持できている人」とも言えるのだ。

もっとも、研究は観察的であり、因果関係を断定するものではない。βカロテンの高用量サプリメントが喫煙者の肺がんを増やした過去の試験のように、栄養素単独の大量摂取は逆効果になり得る。重要なのは、さまざまな色の野菜や果物を日常的にとり、自然なかたちで血中カロテノイドを高めることである。

論文の結論は明快だ。

「高い血中カロテノイド濃度は、がん、心血管疾患、そして全死因死亡率の低下と一貫して関連していた。多様な果物と野菜を十分に摂取することが、長期的な健康維持と寿命延伸に寄与する可能性が高い。」

つまり、食卓の“色”こそが命のバロメーターである。サプリではなく自然の色――赤、黄、緑、橙の豊かな野菜や果物が、最も確かな「延命薬」なのだ。