万博の空飛ぶクルマは大失敗!!!
「プリンウスはなぜ空を飛ばなかったか」──それは、地に足がついていなかったからです。
昔々……といっても、まだFAXがピーヒョロ元気だった平成のころ、日本を代表する巨大企業「トヨトミモータース」から、世界初のハイブリッド車・プリンウスが1997年に産声を上げました。
その誕生の裏には、「環境のため」ではなく「世界初」の勲章と「世界一」の見栄を同時に欲しがった、どこか戦国武将のような企業精神がありました。いや、見栄と功名に生きるのは、何も武士だけじゃありません。「叩き上げの暴れん坊」として知られた奥寺社長は、創業家以外から初めてその椅子に座った男。
ところが、無能な創業家排除の計画をした彼の改革は“部下の裏切り”より敗れました。あっという間に退陣。ドラマチックな改革の物語は、現実では大抵、打ち切りエンドです。そして奥寺社長はトヨトミの歴史からも抹殺された。
地球憲章と現場白目──「夢」と「納期」の戦い
「地球環境憲章」という高尚な旗印のもと、現場では「あと2年で30km/L? 冗談でしょ」と青ざめる声が響いていました。通常4年半かかるハイブリッド車の開発が、「叩き上げの暴れん坊」として知られた奥寺社長の「京都会議に間に合わせろ!」の鶴の一声で、2年短縮。地球の未来より国際会議の見映え。これぞ、日本式エコの真髄です。
そして、日本的優しさとは、「やれるって言ったよね?」と笑顔で詰める文化のこと。「NOと言えない日本人」は、実は外交だけでなく、職場にも常駐しています。
プリンウス開発の父・八重樫氏はのちに語ります。「納得できる出来ではなかった」。けれども世界は大絶賛。つまり、日本の技術とは、納得しなくても拍手される“驚き”製造マシン。ある意味、それは芸術に近いのかもしれません。
栄光は組織のもの、責任は個人のもの
プリンウスは大ヒット。アメリカのセレブたちが小さなハイブリッド車に乗り、「私って地球想い♡」とポーズを決めました。でも、その陰で開発を指揮した奥寺氏は歴史のなかからスーッとフェードアウト。栄光は組織に、失敗は個人に。まるで伝統芸能のような「責任の美しい配分」が、今日も日本の会議室で披露されています。
組織は変わる。でもDNAは変われない
かつてのプリンウス開発は、「本気で支援すれば現場は燃える」の好例でした。でも令和の今も28年前のプリンウスの残影で食いつないでいます。今では企業が本気を出すのは、「マルチパッツンウェー」の掛け声と進捗管理アプリの更新だけ。「やる気」はあるけど、「中身」は空っぽ。これが今の“ガラパゴスハイブリッド経営”です。
それでも会議では「地球が大切」と唱えます。けれど現場で聞こえるのは「コストは?」「納期は?」ばかり。地球の未来より、社内報の〆切の方が重要なのですから、もう笑うしかありません。
日本が飛ばすべきは空飛ぶクルマではない!空飛ぶプリンウスが空想に終わった理由は、技術じゃありません。私たちが“思考停止””創業家第一のヒラメ族化”していたからです。ペーパーレス会議で紙を配り、生成AIにFAXを送らせる国に、果たしてeVTOLを制御する未来があるでしょうか?
本当に必要なのは「空を飛ぶ技術」ではなく、「まともな着地方法」。昭和の価値観という燃料で、令和の空を飛ぶのは無理がある。いくらエンジンを載せ替えても、操縦するのが前例と空気じゃ、未来は“失速”です。
低燃費な衰退へ──「変わらない日本」の行く末
「世界を変える技術」はあるのに、「自分を変える勇気」がない。それがこの国の最大の矛盾かもしれません。プリンウスをつくった私たちは、実はもう、自分たちの思考をチューニングする必要に気づいているはず。でも、それを認めるのが、何よりも苦手な国民性──。
空飛ぶ車を待ちわびる前に、まず地に足をつけて、「なぜ作るのか」「何を大切にしたいのか」を考える。その地道な問いこそが、真の“未来航路”なのかもしれません。
おまけ:もしあの“叩き上げの暴れん坊”が排除されなければ…?
……「叩き上げの暴れん坊」として知られた奥寺社長が裏切りにより排除されて居なかったら、今ごろプリンウスは、eVTOLとなって世界の空を駆けていたかもしれませんね。でも実際に飛ばされたのは彼の椅子だけ。やっぱりこの国が本当に飛ばすべきは、空飛ぶクルマではなく、空回りしてる“思考”そのものなのでしょう。
参考:『トヨトミの野望』『トヨトミの逆襲』『トヨトミの世襲』──読みながら、あなたもそっとFAXの電源をお切りください。