人間と云う生き物を探求して約45年!さらに探求は続く
「慣れ」が教えてくれる、しなやかに生きる力
人の心は、思っている以上にやわらかくて、そして強い。
なぜなら、私たちの脳には「慣れる」という力があるからだ。
たとえば飛行機に乗ったとき、離陸直後の大きなエンジン音に驚いても、しばらくするとその音が気にならなくなり、眠ってしまうことすらある。これが「ハビチュエーション(慣れ)」という現象だ。同じ刺激に繰り返しさらされると、脳はその反応を抑え、エネルギーを節約するようにできている。これは、進化の過程で私たちが手に入れた「生き延びるための知恵」なのだ。
この「慣れ」の力は、身のまわりのあらゆる場面で働いている。
新しい職場での緊張、人間関係の微妙な違和感、新しい勉強への不安。それらは最初こそ強く感じられるが、やがて自然なものへと変わっていく。慣れることで私たちは、日々の暮らしを滑らかに、安心して送ることができるようになる。
けれど、この「慣れ」は時に、もうひとつの顔を見せる。
どんなに素晴らしい出来事も、続けば当たり前になり、ありがたみが薄れてしまうのだ。これは「限界効用の逓減」と呼ばれる経済学の法則でもある。たとえば、最初の一口のビールは最高においしい。でも、何杯も飲むうちにその感動は薄れていき、最後は惰性(無駄飲み)で飲んでしまう──そんな経験はないだろうか。
これは、私たちの脳がひとつのことに執着しすぎず、「次にやるべきこと」へ注意を向けさせようとする働きでもある。「もっと美味しいものがあるかもしれない」「もっと安全な場所があるかもしれない」──そんなふうに前を向かせてくれるのが、「慣れ」の力だ。
この仕組みは、ビジネスの世界でも活用されている。
たとえば、毎年秋に登場する「季節限定のラテ」は、味覚や季節感だけでなく、商品への“飽き”を防ぐための戦略でもある。企業は、レイアウトやサービスを定期的に変え、顧客の「慣れ」によるマンネリを避けようと工夫している。
行き過ぎた商業主義はこの力を悪意を持って利用して・・人を過大な無駄消費へと導いて利益を上げ続けるのですね。この特性を知る事で老後を過酷にする人生の無駄の多くは防ぐ事が出来ますよ!
教育の現場でも同じだ。
最新のビジネス事例を取り入れた講義や、実践的なワークショップを組み込むことで、学び手の集中力を保ち、意欲を引き出している。これは「慣れ」と上手につき合うための、知恵と創意の積み重ねだ。
しかし、「慣れ」が本当にありがたいのは、つらいときかもしれない。
大切な人との別れや、大きな挫折に心が折れそうになる日もある。そんなとき、時間とともに少しずつ痛みがやわらいでいくのは、私たちの脳が「負の感情」にも慣れていくからだ。
「この苦しさが、ずっと続くわけではない」
そう信じられることは、人生を歩いていくうえで大きな支えになる。
橘玲氏の『シンプルで合理的な人生設計』では、人生の幸福を支える要素として「合理性」が挙げられている。限界効用の逓減を知っていれば、目先の快楽に振り回されず、長期的に自分を大切にする選択ができる。
すべてが変わりゆくからこそ、私たちは立ち止まらずに進めるのだ。
「慣れ」は、決して悪いことではない。
それは、過剰な刺激に押しつぶされず、柔軟に変化しながら、前へ進むためのしくみなのだ。
よいことも、つらいことも、やがて“当たり前”になる。
だからこそ、今この瞬間の感情を大切にしながら、変わりゆく自分自身を受け入れていく。
私たちが本当に賢く、やさしく生きるためには、「慣れ」という力とどうつき合うかを知ることが、大きなヒントになるのかもしれない。
私が何時も申し上げている「真なる学び」の会得の基本は、本当の自分の心を知るところからスタートします。そして上記の様な人の心の「慣れ」と云う特性を知り、自分をどう高みに導ける人と人の出会いや別れ、そして読書と云う領域の良書との出会いの判断力等々が身に付き、知恵を実践しながら自らの「克己心」が鍛錬されて行くと思います。